「うちの子、日本語を話さなくなった…」海外在住ママ・パパが抱える共通の悩み

海外で子育てをする中で、多くの親御さんが直面するのが「子どもの日本語学習」という壁です。幼い頃は日本語で話していたのに、現地校に通い始めると、いつの間にか現地語が中心に。「日本語で話しかけても、返事は現地語…」そんな我が子の変化に、寂しさと焦りを感じている方は決して少なくありません。

これは、子どもたちが新しい環境に適応しようと努力している証拠でもあります。しかし、親としては「このまま日本語を忘れてしまったらどうしよう」という不安がよぎるのも当然のこと。特に海外在住ハーフキッズや日本人の子どもにとって、日本語学習のモチベーションを維持することは簡単な課題ではありません。

なぜ?子どもが日本語学習のやる気を失う3つの理由

子どもが日本語への興味を失ってしまう背景には、海外という環境特有の理由が隠されています。

現地校での生活が中心になる

子どもにとって、一日の大半を過ごす学校は世界の中心です。授業、友達との会話、遊び、宿題のすべてが現地語で行われる環境では、生きるために最も必要な言語が現地語になるのは自然な流れです。その結果、家庭でしか使わない日本語の優先順位は、どうしても下がってしまいます。

日本語を使う必要性を感じない

家庭の外に一歩出れば、日本語を使う機会がほとんどない。この環境が、子どもにとって「なぜ日本語を学ぶ必要があるのか」という根本的な疑問を生じさせます。親との会話が唯一の日本語のアウトプットの場である場合、学習の必要性を実感するのは困難です。特に、国際結婚のご家庭では家族の共通言語が現地語になりがちで、日本語に触れる時間はさらに限定されてしまいます。

「勉強」として捉えてしまうと苦痛になる

ただでさえ現地校の宿題で忙しい子どもたちにとって、「日本語の勉強」がさらなる負担になるケースは多いです。週末は日本語補習校に通い、漢字の書き取りや読解問題に追われる…。このような「やらされ感」は、子どものモチベーションを著しく低下させ、日本語嫌いを助長する原因となりかねません。

「9歳の壁」とは?学習言語としての日本語の重要性

子どもの言語発達には「9歳の壁」という重要な時期があることをご存知でしょうか。これは、言語能力が次の2つの段階で発達することに関係しています。

  1. 生活言語能力(BICS): 日常会話で使われる、いわば「おしゃべりの言葉」。文脈に助けられるため、比較的早く習得できます。
  2. 学習言語能力(CALP): 読書や学習、抽象的な思考に必要となる高度な言語能力。習得には5年以上かかると言われています。

9歳頃になると、学校の学習内容は具体的な事象から、分数や説明文といった抽象的な概念を扱うものへと高度化します。このタイミングで「学習言語」が育っていないと、思考の壁にぶつかってしまうのです。

海外在住の子どもの場合、生活言語としての日本語は話せても、学習言語としての日本語に触れる機会が圧倒的に不足しがちです。この壁を乗り越え、将来日本語で深く思考し表現できる力を育むためには、この時期に意識的に日本語学習を継続することが極めて重要になります。

モチベーション低下は当然?まずは親の心構えから

子どもの日本語離れを目の当たりにすると、「自分の努力が足りないからだ」と自分を責めてしまいがちです。しかし、何よりもまず「子どものモチベーション低下は自然なこと」と受け止め、親自身の心構えを見直すことが、長期的な成功への第一歩です。

完璧を目指さない。「細く長く」続けることの大切さ

海外在住の子どもに、日本で育った子と全く同じレベルの日本語力を求めるのは現実的ではありません。大切なのは、完璧を目指すことよりも、日本語との繋がりを完全に断ち切らずに「細く長く」関わり続けることです。たとえ一日5分でも、日本語の歌を聴いたり、絵本を眺めたりするだけでも十分。その小さな積み重ねが、将来大きな財産となります。

親の頑張りすぎは禁物!バイリンガル教育は親子で楽しむもの

「私が頑張らなくては!」という親の過剰なプレッシャーは、子どもを追い詰めるだけでなく、日本語学習を「親のためにやること」と捉えさせ、自主性を奪う原因になります。親が必死な形相でドリルを広げるよりも、親自身が日本のドラマや音楽を楽しんでいる姿を見せる方が、子どもの興味を自然に引きつけます。バイリンガル教育は、親子で楽しむもの。この大原則を忘れないようにしましょう。

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コスモスの丘

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